ひとりごと

たどりつけると信じて猛ダッシュ

松本真実

家から出て短い坂を下ると、
細い1車線の割に交通量が多すぎる
道路が通っている。

バス通りでもあり、
通勤時間帯や雨の日には
大渋滞が起こってしまうほど。

そのバス通りを渡るための
横断歩道をわが家は
毎日何度も使うのだが、
青信号がすこぶる短くて
困ることが多い。

朝、幼稚園児の娘が乗る
園バスが停車する場所も
この青信号の先にあるので、
少しでも家を出るのが
遅くなっただけで致命的である。
青信号を逃すと、
目の前をスイーッと園バスが通過し
次に青になるまで待たせてしまって
平謝りしたことが何度もある。

今日はというと、
余裕を持って家を出たので
ゆっくり信号が変わるのを
待っていた。
雨が降っていて肌寒い。

と、
この信号をめがけて
猛ダッシュしてくる女性が
目に入った。
50m、いや70m先くらいから、
脇目も振らず一直線に
すごい勢いで走って来ている。
しかも傘をさしていて
今にも裏返らんとしている。

この信号を
絶対渡れると信じているのだ。

短い青信号の、
このタイミングを逃したら
次は無いと言わんばかりの気迫。
実際バスに
乗り遅れそうなのかもしれない。

ここら辺の住人はみんな
この青信号が短いことを
知っているので、
小走りする人はかなりいる。

でもこんなに鬼気迫る走りは
初めて見た。

女性が到着するのを
待っていたかのように
信号は青になり、
無事女性は渡ることができた。
なんかこっちまでホッとした。

私もこんなに爽快に
走ってみたいもんだと思った。

自分が目指すゴールには
絶対たどり着けるんだと信じて、
一直線に猛ダッシュしてみたい。

必死な私の形相を
笑う人の目なんか気にせずに。
たどり着く寸前に
赤信号になるかもしれない
不安も抱えながら。
そんなふうに走れたら
気持ちいいだろう。

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