ひとりごと

下準備は何をするにも一番大事

松本真実

朝から晩まで
ミシンでいろいろな物を
縫っている。

まもなく新学期が始まるので、
1年生になる娘の
巾着袋やランチョンマット、
6年生になる息子の
ボロボロになった体操袋や
ゼッケンの付け替えなど、
作る物がありすぎて
いくら縫っても終わらない。
(私がミシン素人なせいもあるが)

今の時代
売っていない物はないので
買えばいいのだけれど、
自分が祖母の手作り品で
育ってきたせいもあって、
できるだけ作ってやりたいという
思いがある。

祖母に布での物作りを
習ったことはない。
だから自分に子どもができて
ミシンを触るようになって、
縫うよりも下準備の方が
ものすごく大事だということを
初めて知った。

型紙通りに
チャコペンシルで布に線を引き、
まずはきちんと
布が切れないと始まらない。

完成品は小さくても、
縫いしろや
裏表分などがあるので
切った布は意外と大きくなる。

つまり長さをまちがえて切ると
布が足りなくなってしまうので、
型紙通りに布に線を引き
切っていくのは
かなり大切な工程だ。

切った布のほとんどの辺は
糸がほつれてくるので
縫いしろとして細く折って、
すべてにアイロンをかける。

縫う時に
布が浮かんでしまうと
縫えないから、
アイロンで縫いしろを
ぺったんこにするためだ。

ミシンを始めた頃、
この下準備が面倒すぎて
本当に嫌だったし、
全然うまくできなかった。

私は祖母がかっこよく
ミシンを使う姿しか
記憶になかったので、
まさかこんなに細かい作業を
しなければいけないなんて
まったく知らなかった。

ミシンで縫う作業なんて
ほんの一瞬で終わってしまう、
一番簡単な工程だったのだ。
逆に言うと、
下準備を
しっかりしていなければ
ミシンでは
縫うことさえできない。

この、
下準備が何より大事というのが
まるっきり
ライターの仕事と同じだと
気がついた。

下準備や取材が
しっかりしていなければ、
ミシンで縫えないように
原稿も書くことができない。

どの世界も、
そういうふうに
できていることに気づいた。

ミシンで物を
完成させる度に、
やっぱりきちんと作った物を
子どもが持ってくれると
嬉しいと思うようになった。

出来上がりは
ちょっとゆがんでいたりも
するのだけれど、
丁寧に作ったという
気持ちだけはこもっている。

息子はかなり
物に愛着を持つ性格で、
給食袋などは
晴れの日も雨の日も風の日も
ランドセルに引っ掛けて
登下校して、
5年経った今も
使ってくれている。
色褪せたその給食袋を見ると
嬉しくなる。

これからやっていきたい
ライターの仕事。
自分が書いた原稿は
未熟で足りないものが
あるかもしれないけれど、
下準備をしっかりして
丁寧に書くことだけは
心がけていきたい。

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